予想外には予想外の得られるものがある。
出勤したらフロアーチーフになっていた。
担当業務にも得意、不得意はあるものの、自信が付き始めていたころ。
出勤して初めに上司の方から、言われた一言。
「ライク君、今日、チーフだよ。」
僕はホテルの客室清掃のバイトをしていたので、この場合のチーフというのは、簡単に説明すると、各フロアーごとのまとめ役になります。
その日のチェックアウトの状況、滞在中のお客様の清掃時間指定、次のチェックイン予定の部屋の到着予定時間等を見て、清掃する部屋の優先順位を決め、清掃員の方々に指示を出すのが主な役目です。
本来は、通常清掃を把握していないと、清掃員やお客様からの質問等に答えきれないため、基本的な通常清掃を行っている客室清掃員の中からチーフに適任の方を選びます。
僕の場合は通常清掃ではなく、故障、破損した備品の交換や、通常清掃には含まれない清掃業務(カビの除去等)の担当だったため、通常清掃を把握していません。
本来ならフロアーチーフになることはありません。
そこで、冗談だと思い、冗談でしょう?という意味合いで、
「またまた~」(笑)
というと、その上司は真顔で言いました。
「またまたじゃないよ、本当だよ。」
訳がわからないまま説明を受ける。
タイムカードを押したあと、いそいそと作業の段取りを説明する上司、しかし脳内は、混乱状態でした。
いやいやいや、意味が解らない、え?ホントなの?なにこれ!?他にできそうな人はいっぱいいるのに自分には向いてない!なんで自分!?
説明を受けても耳に入ってこない。
後々、なんで急にチーフにしたのかを聞くと急な欠員がでて、チーフの人数が足りなくなったこと。
繁忙期のため、通常清掃員の方を減らしてチーフにすることができなかったこと。
この二つの理由で、僕にチーフをさせようと考えたとのことでした。
いざ、フロアーへ、
一通り、準備が終えて、担当のフロアーへと上司に連れられて行く。
今日、僕が担当するフロアーにつくと、このフロアー担当の清掃員の方が、作業開始前の準備をしているところでした。
準備をしている清掃員の方々に上司から、
「今日はライク君が、チーフするからよろしくね。」
と簡単に説明をして、清掃員の方たちに各々の清掃する部屋を割り振っていきます。
この時の、清掃員の方たちの大丈夫か?という不安な表情を見つつ、いや、自分が大丈夫かを聞きたい!と心のなかで思いました。
そして、上司、いなくなる。
そして、ある程度作業をこなしつつ説明をする上司の後ろをついていき、何とか覚えようと説明を聞いていたら、あっという間に午前中が過ぎようとしていました。
午前中が過ぎようとするころ、上司が信じられない一言を放つのです。
「じゃ、一通り説明したから、大丈夫だよね。任せるよ。」
「いやいや!大丈夫じゃないです!」
というと、
「大丈夫じゃない、じゃないよ。自分も他の業務あるからお願いね。」
といって去っていきました。
どうなっても知らないからな。
そしてフロアーに取り残されることになりました。
そして、色々考えて、考え抜いた結果、一つの結論にたどり着きました。
ほんの2時間、いそいそと説明して、大丈夫じゃないと言ったにもかかわらず、
おいていったということは、どうなってもいいということだよね?
失敗してもいいということだよね?もうどうなっても知らないからな。
失敗してもいいならとことんやってやろう!
と半ば開き直り、自分のやりたいようにやりました。
その日を終えて。
その日の午後は解らないことや終了前にやる作業を上の階のチーフに教えてもらい、なんとか無事に終了しました。
事務所に戻り、帰りの準備をしていると、他のチーフの方が一言。
「一度やったら、もうしょっちゅうやらされるよ。」
と笑いながら、言いました。
その言葉通り、この後、2年半ほどフロアーチーフを担当することになりました。
予想外から始まったことで得られるものはまた予想外でした。
今から思い返すと、突然に始まった2年半ほどのフロアーチーフ生活でしたが、この時期にすごした時間が、特に自分を成長させてくれて、楽しく、やりがいのある期間でした。
仕事以外でもこの時の経験からいろんな面に自信がつき、引きこもりだったころより、各段に人前に出ることへの、緊張や疲労感が薄れていきました。
もしも、予想外のことがおきて、不幸だと感じても・・・
それって未来からみたら不幸じゃないかもよ?
予想外の出来事は予想外の方法で予想外のチャンスを連れてくる。
長文、読んでいただきありがとうございました。